大学院

水の民大学 工学部 機械エネルギー工学科のワルター 般教は全て歴史系 単位は落としたことなく今期GPA3.8 「陸民大学の連中となんか仲良くする気も無い」

機械工の中で一番で、研究室が選び放題なワルター。著名なメルネス教授の下でドクターを取りたいと精進していたが、陸民大学の造船科セネルがコネ入学でいきなりやってきて、大した能力が有るとも思えないが助手になったのはセネルのみだった!

メルネス教授は助手を一人しか取らないと言うのは有名な話だが、それでも今まで教授のテーマで書いてきた多くの論文も、セネルのものよりよほど論理的な考察をしていたはずだ。機械工の希望の星と呼ばれた俺が、なぜこんなやつに?ワルターは理解が出来ない

そうおもっていた矢先、研究室で飲み会が開催されることになった。遅れてきたセネルは端に座っていたワルターの隣に座ってきた。ワルターはあからさまに嫌な顔をする。セネルは ずいぶん嫌われたもんだな と言いながらも、その席を離れようとしなかった

酒の席で、セネルはセネルで苦悩を抱えていることを知った。しかし、 それがなんだというのだ、俺はお前と違いメルネス教授の研究室に入るために学科一番まで上り詰めた。それが貴様は?

時はたち・・・

同じメルネス教授の下で学んだオスカーは、メルネス教授の研究室での研究滄我と新エネルギーの研究をする会社に、修士卒で就職することになった。彼はワルターと昔からの友人であり、彼のメルネス教授の下で学びたいという意思をよく知っていた

セネルが来てから、ワルターはこのままだとメルネス教授の下で教授と共にこの分野の最先端を走ることはできないと薄々ながら感じていて、なぜあいつが、と思っていることをオスカーは知っていた。オスカーはワルターに就職はしないのか、と酒の席でおろかに聞いてしまってから、確定的に知ってしまう

僕たちは、新エネルギー滄我とその第一線での研究を行うメルネス教授に対して尊敬と情熱を注ぎ、そこに向かって進んできたが、道は分かれた。それは目的は同じだが、生き方の違いだ。お互い自分の道に誇りを持ち、僕はワルターの博士になり、メルネス教授の下で基礎研究を続けたいというその心意気を心から祝福し、応援したし、ワルターも僕が就職をするといったとき、わずかながら笑って応援をしてくれた

滄我という15年前に存在が確認され、つい最近までその実態すらなかった新エネルギーは、まだまだ発展途上であり、基礎研究はやはりメルネス教授の下でないと生活すらままならないだろう。しかし、このまま行けば唯一の助手はセネル(たち?)。ワルターは別の道を探さなければならない

オスカーは、ワルターに対して「ワルターはワルターのしたい事をすればいいと思うよ」といったことを、思い返す時があるが、それはワルターがメルネス教授の助手になれなかったということを知り、ワルターからのごくたまにの連絡があった時に、特に思い返す

オスカーは友人としてワルターを心配していた。ワルターからは3ヶ月に1度ほど連絡があるが、前連絡来たときの電話越しの声は元気がなかったのに、何故気づかなかったのだろうと、後悔しているときはワルターが行方不明になって2週間が経って連絡が自分に来た時だった

オスカーは有休をとり、ワルターを探すことを決める。メルネスはワルターを捜索しながら新エネルギー滄我について重要な手がかりのある遺跡船というコードネームを持つ海に浮かぶ島のような場所を探す予定らしい。そこはオスカーがワルターに話した論文のネタではないか

オスカーはその小島のような遺跡船にワルターが居るような気がして、そこに行くことを決めた。案の定そこにはワルターが居たが、彼は黙々とメルネス教授のために滄我について調べていたのだ。

オスカーはワルターに、行方不明と聞かされていたことを伝えると、ワルターは そうか とだけ言って、度重なる疲労によって動きの悪い体を無理やり動かして研究を進める。オスカーは、そんなワルターの姿を痛々しそうに見守る。 オスカーは、ワルターに、何故そんなにメルネス教授のために頑張るのか聞いた。ワルターは、メルネス教授の研究と、その未来を信じているからだと言う。オスカーは言葉を失った

ずっと沈黙が続いたあと、ワルターは、 なぜメルネス教授は俺ではなくセネルを選んだのだろう と言った。オスカーが何も言えないでいると、さらにワルターは続けた。 ずっと昔から、メルネス教授の下で研究をするために、たくさん努力を重ねてきた、それなのに、何故、いきなりやってきた奴に…

オスカーは、言葉に窮した。その問いはメルネス教授しか答えられない。ワルターだってそんなことは知っている。しかし、そんな弱音を吐くほど衰弱しているワルターに、オスカーは何をしてやれるんだろう。

僕は、新エネルギー滄我が世界にとって必要だと思って、それを信じて生きてきた・・・でも、僕たちの道は違った。でも、目的が違っても同じゴールを目指してる。ワルターは、メルネス教授を信じて、滄我を信じた。だったら、今はここで研究して、ボロボロになってる場合じゃないと僕は思うよ

メルネス教授を信じて、滄我を信じるなら、それを証明する場所・利用する場所・守る場所は 助手という立場だけじゃないから・・・本当はたくさんの道があるんだ。ワルターがこの道を選ぶというのなら僕はワルターを信じる。でも、本当に証明したいなら、メルネス教授の助手の道ではない、ほかの道を

探そうよ、ワルター

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この後ワルターはドクター取ってから一般企業に就職する。新エネルギー開発に対して意欲的な会社に。そこで30くらいまで働くんだけど、客員研究社員としてメルネス教授による研究を引き継いだセネルがちょっとだけやってくる

最初はすっごい嫌で、会社内でも愛想は無いけれど、真面目で真摯な結構人気のワルターがあんな態度を取るなんてってみんなびっくりするほどだった。でも、だんだんセネルに対して、ああ、こいつも俺と同じで、信じてるんだなって 同じ"絆"を信じているんだ、ってワルターは感じて、そこから、セネルの事が不思議と嫌いじゃなくなってゆく

35過ぎたワルターとオスカーはたまに飲みに行くんだけど、その中にたまにセネルも交じってるかもしれない セネルも、メルネスにたまにはワルターの調子が見たいなと言われると、これは男の世界だからって断ってしまう 

もう二人の中には確執は無い。40過ぎたら教授になったセネルのもとで教えをたまわった学生がワルターの所属する会社に就職してきて、ワルターの下につく。セネルには、俺より出来の悪いお前に教えられた新人は出来が悪いって、笑いながら言う

あんなに研究バカだったワルターが、40過ぎて新人教育に自分で知らずに熱心になっていく。昔はメルネス教授の研究によって命を落としても構わないと思った。今はその研究の価値を信じるために、信じた先を"繋ぐ"ために生きている